一人の野心ある商人が
降り立った港町
外国人居留地として造成された
南山手地区の中でも、
長崎港を見渡す丘の上に立つ邸宅。
現存する日本最古の木造洋風建築に住んでいた
実業家トーマス・B・グラバーを
知ることで、長崎発展の歴史の礎を知ります。
1859年、長崎にやってきたスコットランドの商人、トーマス・B・グラバー。若きグラバーがおこなった西洋の技術導入は、その後の日本の近代化への道筋を示しました。
1863年に建築された現存する日本最古の木造洋風建築物、旧グラバー住宅。日本茶や生糸を輸出し、西洋の進んだ武器や技術を輸入することで富を築いたグラバーは、外国人居留地が開かれると、長崎港を見下ろす最も景色がいい高台に住居を建築しました。当時の日本は外国船の来航によって長崎など各地の港が開かれ、200年以上続いた鎖国が終わりを迎えた混乱期でした。
木造建築の多い日本では、火災や戦災で多くの建築物が失われています。原爆などの戦災から逃れ、現代に残された貴重な木造建築群をこの先も維持することで、長崎発展の原点を継承します。
「外国人は日本を支配しようとする敵」という考えから一転して、
薩摩藩と長州藩は秘密同盟を結び、グラバーが設立したグラバー商会から武器などを購入して、江戸幕府を倒幕へと追い込んでいきました。その後、明治維新と呼ばれる革命を成功させ、1868年に新たな日本政府が誕生しました。
新政府は富国強兵を打ち出して西洋化を進めました。製鉄や蒸気機関などの産業振興に欠かせないエネルギーとして、重要な役割を果たしたのが石炭。グラバーは石炭採掘にいち早く目をつけ、日本初の蒸気機関による採掘方法を高島炭坑に導入しました。長崎では隣の端島(軍艦島)などへと採掘場所が広がり、約100年にわたって代表的な日本のエネルギー供給地となりました。
グラバーはまた、日本で初めて鉄道を走らせ、高島炭坑や船の修理用ドックの建造に関わった人物でもあります。その住まいである旧グラバー住宅は今では現存する日本最古の木造洋風建築として重要文化財に登録されています。「風」と言われるのは、設計はグラバー自身と言われるものの、施工したのが日本人だから。よく見ると外壁は漆喰塗りで、屋根は瓦屋根。日本人は西洋の家と思うのですが、海外の方は「和風の家なんですね」と話すそう。西洋とアジアと日本が入り混じる長崎らしさを象徴する世界遺産なのです。
グラバー園
住所:長崎市南山手町8-1
営業時間:8:00-18:00
(GWや夏期、イベント開催時など、季節により夜間開園実施。公式HPをご確認ください)
駐車場:なし(近隣駐車場をご利用ください)